公園散策20年のマイスター直伝!東京公園ガイド - vol.15-

【東京】ヨーロッパを思わせる風景も見所!水辺に針葉樹の森が広がる水元公園

2015/12/08 09:01

葛飾区と埼玉県三郷市の境に位置し、東京23区内最大の面積を誇る水元公園。豊かな水をたたえて空を映す大きな溜池がシンボルの水郷地帯です。生きた化石といわれるメタセコイアの森、1キロ以上にわたって続くポプラの並木道、見渡す限りの芝生広場など、来園者が「まるでヨーロッパみたい」という絵画のような風景が魅力。

<水元公園のpoint>
・“生きた化石”といわれるメタセコイヤ、1800本から成る森は圧巻
・水生植物園の散策は秋がおすすめ。水面に映る色づいた木々が美しい
・遊び方は自由!圧倒的な開放感がある中央広場
・ペットと散歩も楽しい、フリーのドッグランには小型犬専用エリアも

穏やかな溜池が魅せる雄大な水郷景観

最寄り駅は、JR常磐線・東京メトロ千代田線「金町」駅。京成バスで10分ほどの停留所「水元公園」で下車します。多くの釣り人たちが糸を垂らしている内溜の脇を歩くこと7分、メインゲートの噴水広場口に到着します。

うねる溜池に沿って南北に広がる公園は、大まかに北側のAブロックと南側のBブロックに分けられます。花菖蒲園や睡蓮池があるBブロックは、春夏には水と緑が一面に広がり、花の時季には多くの人で賑わいます。対するAブロックには、森や広場、バーベキュー場や水生植物園やなど、季節に関わらず人が訪れる定番スポットが集中。今回は、Aブロックを中心にご紹介します。


入ってすぐ目の前にあるのが、園内唯一の売店「グリーンテラス」。広い公園なので、必要なものはここで買い揃えましょう。冬場は肉まんや甘酒が人気。ボールやバドミントンセットなどの遊具、魚用の網やバケツも揃っています。右手には花菖蒲園につながる水元大橋が架かっています。

大橋に背を向けて溜池に沿って北へ向かうと、次第にメタセコイアの森が近づいてきます。水辺の遊歩道を歩くのが、この公園の最もオーソドックスな楽しみ方。蛇行する川のような形の小合溜(こあいだめ)ですが、溜池なので流れはなく、静かで穏やか。時折、風や鳥たちが作るさざ波や波紋が表情を与えています。

左手はベンチが点在する木立。心が安らぐ風景です。

向こう岸に見えるのは、埼玉県のみさと公園。公園の端まで行かないと渡れませんが、景観は自由に楽しめます。アスレチックなど人気の遊具が水辺にあるため、鈴を転がしたような子どもたちの楽しげな笑い声が風にのって聞こえることも。

“生きた化石”メタセコイアの森

水辺ゾーンは、アシやガマが生える湿地帯。カエルやザリガニといった水辺の生き物から、トンボやバッタなどの昆虫までたくさんいて、春から秋まで、あちこちで虫取り網を持った子やザリガニ釣りを楽しむ親子の姿を見かけます。えさが豊富なことから水鳥も多く、運が良ければ木道からその美しい姿を間近に観察できることもあります。


メタセコイアの森は、“生きた化石”といわれるメタセコイアおよそ1800本から成る森。スギの仲間ですが、葉の色が明るく、何より25~30メートルと背が高いのが特徴です。まっすぐ天を突くように伸びる高木の間を歩いていると、まるで自分が小人になった錯覚に陥ります。



てっぺんを見上げれば、高いところも空が見えないほど葉が茂っているのを見ることができるはず。緑の葉も涼しげですが、赤茶色に色づいた秋の森も息をのむ美しさです。

メタセコイアの森を抜け、まだまだ続く樹林帯を進んでいくと、野性的な声が聞こえてきます。現れたのは、野鳥観察舎。野太い声、甲高い声。普段はなかなか耳にしない野鳥の声は、案外ワイルドです。
いつ来ても多彩な水鳥が見られるため、多くの野鳥愛好家たちが集まります。記者がのぞいていると、横のおじさんが、「手前の止まり木に止まっているのがカワセミだよ」と教えてくれました。


もぐって魚を獲ったり、水面を蹴るようにして飛び立ったり、イキイキと過ごす野鳥の様子は、野鳥愛好家でなくともきっと楽しめるはずです。

駆けまわり、寝転がりたくなる!自由と爽快感に満ちた中央広場

秋の水生植物園は、色づいた水辺の木々が見どころ。


程よく日陰があり、木道が整備された水生植物園は、散策にぴったりの場所。木々の向こうに見える緑の芝生は、中央広場です。

木立を抜けると、いきなり視界が開け広い場所に出ます。高層ビルなども見えず、東京と思えない広大な空が見渡せます。中央広場は、とにかく広くて圧倒的な開放感があるのが特長です。見渡す限り、空と森と芝生が広がります。駆けまわったり、ボール遊びをしたり、好きなように遊べる最高の場所です。

中央広場の西側、バードサンクチュアリや水生植物園の反対側にあるのは、水路が通ったせせらぎ広場。青々とした芝生が本当に美しい! 水路の向こう側にはバーベキュー広場があり、夏は水遊びをする子どもたちで賑わう場所。浅瀬なので、小さい子も遊べます。

水辺ゾーンからメタセコイアの森の横を通り、せせらぎ広場につながっている水路。春はチョウが飛びまわる、のどかな場所です。

水路を渡ったせせらぎ広場の西側には、木陰やベンチがたくさん。水路越しに広場を一望できる、眺めのいい場所でもあります。

秋冬は夕闇に浮かぶシルエットが美しい、ポプラ並木

広くてチリ一つ落ちていない園路。自転車で来ても気持ちよく園内をまわれます。

冒険広場には遊具も。冒険広場は丘になっていて、上からは向かいのドッグランがよく見えます。

ドッグランは、小型・中型・大型犬すべてが入れるフリーエリアと小型犬専用エリアがあります。ここも冒険広場同様、起伏があるのが特徴です。


公園の中央から北西端にある水元かわせみの里へと続くポプラ並木。豊かな葉がサヤサヤと風に歌うのも素敵ですが、ほうきのような特徴的な樹形は、葉が落ちてこそ際立つもの。凛とした姿で、冬の夕闇に映えます。

寅さんもビックリ!? 見事な景観と雄大なスケール感が魅力

寅さんで知られる下町の葛飾区にありながら、ポプラ並木などヨーロッパを思わせる洗練された景観と広大な面積を誇る公園。その絵画のような美しさと、解放感あふれる空間に、あなたもきっと虜になるはずです。水生植物が多彩で、毎年6月頃に多くの観光客を集める花菖蒲も見どころの一つ。さらには、都の天然記念物であるオニバスや絶滅危惧種のアサザの自生地としても知られています。

この記事のプレース
水元公園
東京都葛飾区水元公園3-2
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この記事を書いたライター
フリーライター。1976年生まれ。広告制作会社、新聞社等の勤務を経て独立。飲食店取材や街頭インタビューで都内を駆けまわる一方、休日は愛用の一眼レフを手に山や植物公園に出没。公園巡りを始めて20年余。季節ごとの魅力や楽しみ方を知り尽くした「公園マスター」。東京都内の公園はすべて網羅し、公園ごとのオリジナル料理や飲み物、巨木は必ずチェックしている。旅と自然を愛し、ヨーロッパ諸国の他、アラスカやボルネオへの渡航経験がある。主な執筆ジャンルは食、自然、健康など。
<連載> 公園散策20年の公園マイスター直伝!東京公園ガイド