ここ数年でよく耳にするようになった「オーガニック」。地球にも人にもやさしい方法でつくられたオーガニックのアイテムを選ぶ人が増えています。この連載では、“おいしく、楽しい”をキーワードに、誰にでも実践できる暮らしを豊かにするオーガニックライフのはじめ方を提案していきます。
今年もワインに注目が集まる季節になりました。11月19日は、2015年のボジョレーヌーヴォー解禁日。毎年この日を楽しみにしている方も、何を選べばいいかわからないという方も、今年のボジョレーヌーヴォーはオーガニックワインにしてみませんか? 1998年にオープンした、日本初のオーガニックワイン専門店「マヴィ」赤坂本店で、店主の田村安さんにオーガニックワインについて教えてもらいました。
オーガニックとは、<有機の>の意味で、通常は農薬や化学肥料を使わず、有機肥料のみによって生産された農作物のこと。化学合成農薬による健康被害などをきっかけに、オーガニックを選ぶ人が増えています。主なワイン生産地・EUでは、オーガニックは「BIO(ビオ)」と呼ばれます。
「ファミレスで、コンビニで……手軽に飲める低価格ワインブームが続いて久しいですが、味や品質を追求する人が飲んでいるのは、オーガニックワイン。環境問題、健康志向などはさて置いておいて、奥の深いワインの世界でもオーガニックワインが選ばれる理由は、味がいいからに他なりません」
第1回、2回では、オーガニック野菜を栄養いっぱいの皮まで食べることで、美と健康が叶うと教わりました。ワインづくりにおいても、原料はぶどうを皮ごと、それも洗わずに使います。
「ぶどうの皮についた微生物の力によって、ぶどうが自然に発酵したものがワインです。果実の水分のみを利用し、醸造の過程で水も一切加えません。ワインボトルには、畑の環境がそのまま詰まっているのです」
産地や年など環境によって異なる味わいを見せるワイン。それこそが今日にいたるまで多くの人を魅了しているのです。
残念ながら今では工場で加工されたものがほとんど。わたしたちが思い浮かべる、「収穫したばかりのぶどうをワイナリーで醸造する」昔ながらの製法でつくられるワインは希少な存在です。ここで、オーガニックワインの特徴を簡単に説明します。
ぶどうの状態
根が深く張り、ミネラル豊富
発酵
天然酵母が自然発酵を進める
香料
使用不可
味
酸味調整剤使用不可
色
合成タンニン・色素安定剤使用不可
酸化防止剤
硫黄を燃やした煙を吹き込む、昔ながらの二酸化硫黄を使用
加熱殺菌
不可
「オーガニックワインは農薬不使用のぶどうを使って昔ながらの製法でつくっています。料理の邪魔をしない、のど越しが良いなど味が良いだけでなく、お腹を下さない、頭痛になりにくいなど、わたしたちにとっても嬉しいメリットがいっぱいなんですよ。ワインが大好きでよく飲んでいる人にこそ、余計なものが入っていないオーガニックワインを選んでほしいですね」
ワインに使われている香料や着色料なんて気にしたこともありませんでしたが、オーガニックワインは素材の味を生かし、自然な製法でつくられた、とても純粋な飲み物なんですね。
オーガニックワインはおいしいので少量で満足でき、添加物を含まないので体への負担も減ります。毎日元気にお酒を飲みたいなら、オーガニックワインを試してみて。違いが実感できるはずです。
スーパーに並ぶ安価なものから、かの有名な高級ワイン・ロマネコンティまで、オーガニックワインもさまざま。どこが違うのでしょうか?
「おいしいオーガニックワインの見極め方は、2000~3000円台で温度管理がされているものを基準にするといいでしょう。本来、ワインはとてもデリケートなもの。店頭に常温で並べるのは、合成保存料を使わずしてありえません」
ヨーロッパのオーガニック農業推進事業によってオーガニックのぶどう農家が増え、オーガニックワインも増加。さらに2012年にはEUオーガニックワインの規制が緩和され、添加物などの使用が一部認められるようになりました。オーガニック認証のついたワインの流通が増え、一般に認知されるようになったのはここ数年のこと。「オーガニックワインも大量生産・大量販売されるようになり、どうしても添加物を避けて通れなくなっています。厳密には、このような量産品ではなく、農家で手づくりしているものが “本物”のオーガニックワインであると言えます」
マヴィの店頭に並んでいるボトルはすべて見本品。産地から輸入する過程でも適温を保ち、品質を落とさないように細心の注意を払い、商品は定温のワイン庫で保管。通販も夏はクール便で配達します。そうして日本にやってきたオーガニックワインが1600円程度から揃っています。意外とお手頃だと思いませんか?
さらに、マヴィのワインはすべて、ぶどう畑から醸造所まで同じところでつくられた、ワイナリーからの直輸入。 生産者を招いてのセミナーや、現地への見学ツアーを行なうなど、ファーマーズマーケットのように生産者の顔が見える点も安心です。
低価格のワインに慣れている、安く酔っぱらいたい方には割高に感じるかもしれませんが、筆者はたまにお酒を楽しむ程度なので、せっかくならおいしくて安全なオーガニックワインを選びたいと思いました。お店では、200本以上のワインの中から、スタッフが好みにピッタリのワインを選んでくれます。
「料理もワインも、特別なハレの日、普段のケの日で使い分けるのがおすすめです。フレンチレストランで出されるような牛、鹿の赤味の肉には重い赤ワイン、バターやクリームをたっぷり使った味の濃い魚、鳥肉料理には、樽香のついた白ワインが合います。毎日の晩酌ならステンレスタンクで仕上げた白やロゼで。また、冬は赤、夏は軽い白やスパークリングなど、食材や調理法によって相性の良いワインも変わります」
ワインの好みを語れるほど詳しくない筆者。田村さんに「普段の食事は?」と質問され、野菜中心の和食であることを伝えると、「あっさり系の食事をしている人には赤ワインは味が強すぎます。白やロゼがおすすめ」とのこと。赤ワインが健康に良いと聞いて以来、赤ばかり飲んでいましたが、実は白やロゼが合っていたなんて! お手頃なおすすめワインをいくつも教えてくれました。
ボジョレーヌーヴォーでオーガニックワインを試してみたいのですが……。
「3000円台後半のボジョレーなら、本物の製法でつくられたおいしいオーガニックワインと思ってよいでしょう。ボジョレーヌーヴォーは熟成期間が短いため、渋味を持ちつつも度数は低く、軽い。ですから、白ワインに合うような料理と一緒にどうぞ。豚、鶏、ソーセージ、戻り鰹のたたき、油で調理した秋刀魚、野菜なら根菜やきのこ類など、日本の旬の食材ともよく合います。気負わないで楽しめるのがボジョレーなんですよ」
お店ではボジョレーヌーヴォー解禁イベントも恒例とか。飲み比べや軽食が楽しめるほか、特別なワインも登場するそうですよ。
お店の奥はキッチンスタジオになっていて、オーガニックワインの基本を知るセミナーを随時開催。ワインと料理のマリアージュをおいしく学ぶお料理イベントも見逃せません。
店内ではグラス400円~ワインの試飲ができるほか、料理をもっとおいしくする伝統製法の調味料やアロマセラピーの精油も扱っています。
おいしく楽しい時間を演出してくれるオーガニックワイン。プロのアドバイスを受けながら、お気に入りの銘柄を見つけに訪れてみませんか。