“モノづくり”に必要なものが幅広く取り揃えられている「トゥールズ 横浜ジョイナス店」。話題のステーショナリーから額装サービスまで、求める人のニーズを追求した“コンサルティング”を大切にしているという。「来店が描いたり創ったり、モノづくり欲を刺激するきっかけになれば」という店長・野村優治さんにお話を伺った。
−トゥールズはどのようなお店ですか?
当店は、「奥行きの見える画材店」として、色鉛筆から油絵具まで幅広く揃える画材の専門店です。大正8年創業の「いづみや画材専門店」が前身とし、ジョイナス竣工時に開店いたしました。画材を日々必要とする方々に適切に提供しつつ、できるだけ多くの方のアート・デザインの「入り口」になれたらと考えています。
店内の入り口付近では、楽しい文具雑貨や話題性のある商品を展開し、奥はコアな画材をぎっちり詰め込んでいます。店中央には額縁フレームのコーナーがあり、サンプルをたくさん陳列しています。狭い店内ではありますが、大きな接客カウンターを2台置いてあります。当店では、額装サービスを承っているのですが、ここでオーダーをしっかり受け、額装加工を行います。カウンターの背後にはマットカットマシンが置いてあり、エアコンプレッサーの駆動音が店内によく響いています。
−「額装サービス」とはどのようなものでしょうか?
店頭に在庫はほとんどしておらず、作品の成立や入手までの背景などをお客様からしっかり伺いながら、コーディネートを決めて受注後に1点1点手配しています。額装にこだわるのは、アートが再び日々の生活の中に戻ってくる大切な瞬間だと考えているからです。額装に関しては、業界屈指の実績と他の追随を許さないハイセンスなコーディネートを持っていると自負しております。
−額装サービスに関して、お客さんとのエピソードはありますか?
以前日本で暮らしていたイギリス人のご夫妻から頂いたオーダーで、最初はごく質素な額装をご希望されていたのですが、お話を伺っていくうちに一家に代々伝わる貴重な絵画の額縁ということがわかりました。そのため、作品保存という観点と作品の価値にふさわしいデザインの必要性をご説明し、こちらのお勧めしたコーディネートでご注文頂きました。大変ご満足頂けたようで、イギリスに帰国された後も、度々ご注文を承るようになりました。
−お店で取り扱っている商品について教えてください
マスキングテープの新柄や、話題のステーショナリーもたくさんご用意しています。ポストカード・レターセット・スクラップブック用品といった紙製品から、コピックマーカー・色鉛筆・水彩絵具・アクリル絵具・油彩絵具といった画材、スケッチブック・漫画原稿用紙・スクリーントーン・トレス台・製図用品・フォトフレーム・額金具など、アナログ絵師からモノづくり女子までしっかり応援できる品揃えを心がけています。最近のデザイン性の優れたシールやマスキングテープなどのステーショナリーが「入り口」であるなら、「奥の方」のハードな画材ユースにも、可能な限り対応できる店舗でありたいです。
−最近注目のユニークな文具はありますか?
チョークでかけるマステや、ペンタイプのリフィル付箋とかでしょうか。「貼ってはがせる絵具」なども面白いです。また最近では、昔からあった商品が再び脚光を浴びているケースも多いです。オーブンで固める「フィモ」という粘土や、「プラ板」などは何年も前から販売されている商品ですが、今は手作りアクセサリーの材料として再び売れ始めました。その上で、美術の先生方にはぜひご来店いただきたいと思います。教材に使って欲しいわけではなく、「ああこういうのが面白がられてるんだ」との発見をしていただけるのではないでしょうか。
−お店を運営される上で、大切にされていることはなんでしょうか?
とにかくお客様のご相談に乗ることを、大切にしています。「こんな色が欲しい」や「こういった線が描きたい」、「こんな風な額縁があったら」といった漠然としたニーズに、一足飛びに「商品」という回答を示すのではなく、創作(モノづくり)に一緒に参加するくらいの意識を持つようにしています。そのためには、私たち自身が商品に関する確かな価値基準を持っていなければなりません。そして、お客様と同じ目線で、どんな商品が最も適切なのかを考える姿勢が重要だと思っています。
−まるでモノづくりの“コンサルティング”ですね
そうですね。おそらく、本当のニーズというものはお客様と商品、両者の中間に形ないものとしてあるのではないでしょうか。例えば、お客様が使おうとしている画材と、完成させるために必要な画材は別物かもしれません。額装も、ご希望される額縁が必ずしも、その絵画の魅力を引き出すものではない場合もあります。本当のニーズに近づくために、まずご希望の商品の近似商品を複数必ず紹介すること、相談を受けながらプロの目として、これだと思った商品はおそれなくお勧めすること、この“コンサルティング”がお客様の本当のニーズに近づくために必要なことだと思っています。
−お店を利用したいと思っている方に伝えたいことはありますか?
店の前を通りかかって「何のお店かわからない」という方も多いかと思います。「文具屋さん」と見えても、「画材屋さん」と見えても結構です。少しでも気になったら、是非一歩お店の中に足を踏み入れてみてください。見ているだけでも“楽しい”と感じて頂けたら嬉しいです。そして、商品を手に取ったり、スタッフと相談することが何か新しい発見に繋がり、ワクワクするような創作意欲を持って頂ければ何よりです。ご来店をきっかけに、何か描きたくなったり、創りたくなったりしてもらったら、それだけで私たちはお店を開いている甲斐があるなと思います。