<連載>公園散策20年の公園マイスター直伝!東京公園ガイド-Vol.3-

【東京】文化と芸術の香り漂う上野恩賜公園

2015/09/15 10:00

いわずとしれた桜の名所で、4つの美術館と2つの博物館をもつ都内有数のミュージアムスポット。重要文化財や歴史的建造物も多く、外国人観光客や修学旅行生にとっては外せない場所です。カフェやレストランが充実しているので、一日園内にいても不自由なく快適に過ごせるのも嬉しいポイント。
ただ、広い上に施設がたくさんあるので、何度も来ているという人でも知らないスポットがあるのが上野恩賜公園。そこで今回は、定番の見どころに加え、ちょっとディープなスポットもご紹介します!

寛永寺の「月の松」で江戸の粋を感じる

今日は中央通りと動物園通りが交差し、公園前交番のある南側の入り口から入ります。

奥に見える階段をのぼって、本日最初の見どころ、寛永寺の清水観音堂を目指します。

入るとさっそく公園名物の大道芸人を発見。彼らは南米アンデスの民族音楽を演奏するグループで、ここではなじみの顔です。今日は蒸し暑いせいか洋服ですが、よくポンチョのような民族衣装を着て演奏しています。ベテラン大道芸人も、日本特有の蒸し暑さには勝てないみたいですね。

階段の上には西郷隆盛像。横にある日当たりのいいウッドデッキのテラスからは、東京スカイツリーがよく見えます。人気の飲食店が入った3つのビル「上野バンブーガーデン」「UENO3153(上野西郷さん)」「上野の森さくらテラス」の上に位置する場所で、グルメスポットへの入り口でもあります。

安産祈願や人形供養の寺院として知られる寛永寺の清水観音堂へ。参道を抜けて不忍池側から見上げると、「月の松」の全体を見ることができます。

「月の松」とは、植木職人の卓越した技術で枝を輪っかにし、満月に見立てた松。明治初期の台風で失われましたが、2013年に150年ぶりに復活しました。歌川広重の浮世絵「名所江戸百景」にも描かれた独特の枝ぶりは一見の価値あり! 境内から枝の間をのぞくと、不忍池の弁天堂が見えます。時が経っても色あせない江戸の粋です。

不忍池から合格大仏、縁結び神社をめぐる

階段を降りて、不忍池に向かいます。
かつては東京湾の一部だった池は周囲約2キロの大きさ。公園の端にあるため人が少なく、静かに散歩を楽しみたい人にぴったりの場所です。江戸時代から蓮の名所として知られ、桃色の花が咲き乱れる夏の朝は夢のような美しさです。

弁天島にはユニークな石碑が多くあります。中でも異彩を放っているのはめがねの碑。めがねの歴史や業界に貢献した人々の名前が刻まれています。大きく彫られている丸いめがねは、徳川家康が愛用した眼鏡を型どったもの。

不忍池の定番ボートは、カラフルなスワンボート。ビルに囲まれた中での水上散歩は、この公園ならではのおもしろみです。


 
縁結びのパワースポットとして知られる花園稲荷神社。夫婦円満や子授けなどのご利益もあるので、カップルや夫婦で訪れるのもおすすめです。

次に向かうのは「合格大仏」の異名をもつ上野大仏。花園稲荷神社の入り口を左に見ながら公園の中心部に向かって歩くと、左手に「上野大佛」の看板が見えてきます。看板横の階段をのぼったところにいらっしゃるのが、上野の大仏様。
江戸時代に建立されてから、地震や火災などたび重なる災害により損壊してお顔が落ち、現在では顔面だけに。幾多の災難に遭いながらもお顔だけ残し、「これ以上落ちない」ということから、受験シーズンには多くの人が合格祈願に訪れるそうです。売店には大仏様のお顔をモチーフにしたお守りや絵馬があるので、立ち寄った際にはチェックしてみてください。

東照宮というと日光が有名ですが、上野恩賜公園内にも徳川家康を奉った東照宮があります。参道の両脇に立派な灯籠が多数並ぶ様子や、桜の木ごしに見える寛永寺の五重塔など、見どころ満載の必見スポット。歴史マニアや寺社仏閣好きには特におすすめです。
五重塔は、併設されるぼたん苑からの眺めが絵になります。ただ、ぼたん苑に入れるのは、ぼたんの花が咲く1月~2月中旬と4月中旬〜5月中旬の期間だけ。この時季を逃さず行きましょう。

大鳥居をくぐって参道をまっすぐ進んだ先には、黄金色に輝く唐門。この柱には昇り龍と降り龍の彫刻があり、毎晩不忍池に水を飲みに行くという伝説が。偉大な人ほど頭を垂れることから、頭が下を向いている方が昇り龍と呼ばれています。

楽しさと開放感いっぱい。憩いの場を象徴する風景たち

落ち着いた雰囲気を堪能した後に現れたのは、うってかわって可愛らしいパンダ焼きの売店。

パンダ焼きの向かいには、小さな子どもが大好きな遊園地。

上野動物園では、世界3大珍獣といわれるパンダ、オカピ、コビトカバをすべて見ることができます。月曜定休。

動物園の入り口前には、パンダスタイルの郵便ポスト。定型サイズの手紙やハガキを投函すると、パンダや西郷隆盛像が描かれた消印が押されます。近くにはゆっくりできるカフェがあるので、美術館や動物園で購入した絵ハガキに一筆したため、ご家族や友人宛てに出すのも風流です。切手を持参して行けば、すぐに投函できますよ。

変わった外観で目立つ、園内の交番。迷子や盗難など、トラブルが起こったときの心強い味方です。

園内に点在するカフェは、どこも外の席が人気。街の中と違って車も通らず、木々のざわめきや鳥のさえずりを楽しみながらのひと休みは最高です。

外国の宮殿にありそうな豪華な噴水。日暮れどきには、高く吹き上がる水しぶきが大きな空を背景に夕陽にきらめき、心奪われる美しさです。

入り口にある大きなクジラのモニュメントが有名な国立科学博物館、通称「科博(かはく)」。常設展示されている大型哺乳類のはく製や昆虫の標本は見事の一言で、いつ来ても何度見ても飽きません。金曜日は20時まで(入館は19時半まで)やっているので、仕事帰りに立ち寄るのもいいですね。

好奇心を目覚めさせる、古くて新しい場所

東京の歴史と文化の中心地、上野。そのど真ん中で時代を見つめてきた上野恩賜公園は、すべてを受け入れる懐の深い場所。さまざまな人が訪れ、伝統と革新が溶け合い、混沌としたエネルギーにあふれています。
花見やデートは言うまでもありませんが、暇つぶしに訪れるのもおすすめ。何の予定も決めずに行っても、きっと好奇心をくすぐるものを見つけて、何かしらの刺激を得られるはずです。

この記事のプレース
上野恩賜公園
東京都台東区上野公園・池之端三丁目
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この記事を書いたライター
フリーライター。1976年生まれ。広告制作会社、新聞社等の勤務を経て独立。飲食店取材や街頭インタビューで都内を駆けまわる一方、休日は愛用の一眼レフを手に山や植物公園に出没。公園巡りを始めて20年余。季節ごとの魅力や楽しみ方を知り尽くした「公園マスター」。東京都内の公園はすべて網羅し、公園ごとのオリジナル料理や飲み物、巨木は必ずチェックしている。旅と自然を愛し、ヨーロッパ諸国の他、アラスカやボルネオへの渡航経験がある。主な執筆ジャンルは食、自然、健康など。
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