京都駅から徒歩5分にある「京都デニム」。上質で繊細なモノづくりをテーマに、京都の伝統工芸“京友禅”と現代の日常的ファッションのひとつ“ジーンズ”を組み合わせ、京都デニムという新しいファッションを作り上げた。「職人の手仕事を次世代の若い人へ受け継ぎたい」という店長・宮本和友さんにお話を伺った。
−お店のコンセプトを教えてください
当店は“上質で繊細なモノづくり”をテーマに、メイドインジャパンジーンズ「京都デニム」の直営店です。着物を染める職人たちの手仕事で、ひとつひとつ丁寧に制作しています。デニムという新しいキャンバスに京友禅が生きることにより、次の時代に受け継ぐことの出来る、京都の新しい産業を目指しています。
−まず”京都デニム”とは、どのようなものなのでしょうか?
着物の京友禅染めなど、伝統的な染めを使ったジーンズです。ロールアップした部分に染められる桜のモチーフが特徴です。染めている職人は、40年以上着物を染めてきた熟練の職人から、京都デニムを作りたいと他の地域から修行を志してきた、若い職人までいろいろおります。一本一本、すべて職人が丹精込めて染め上げています。
−京友禅のデニムはどのようなきっかけで作られたのですか
「京都デニム」は、京都の伝統工芸の後継者育成のプロジェクトから生まれました。年々高齢化で失われていく職人の手仕事を次世代の若い人にも受け継いで欲しい、という思いから数人の職人たちと約10年前にお店を始めたのがきっかけでした。
−ジーンズと京友禅とは、意外な組み合わせに思えるのですが、アイデアのきっかけは何だったのでしょうか
“日常に使える現代の着るもの=ジーンズ”と考え、時間が経っても愛用して頂けて、気軽に着用できるという点からデニムを染めるというアイデアが生まれました。
−着物とジーンズとでは、染め方にはどのようにことなるのでしょうか?
デニムは糸の段階でのインディゴ染め(先染め)で生地を織ります。多色に染めるためには一度インディゴの藍色を柄所に抜き取り、白く文様所にした部分に、筆を使って職人が1箇所ずつ手仕事で染色していきます。真っ白な生地に下絵を描いて地色と柄部分を染めていく、という着物の染めとはその部分が大きく異なります。
−商品化に苦労も多かったのでは?
そうですね。特に技巧を凝らしたのは“染め”でした。ストレッチ素材を使用した伸縮性のあるジーンズは、コットンのほか、ポリエステルなどの人工素材も使われているため、着物のように熱を加えての染色が出来ません。デニムの風合い、シルエットを保ちながら、洗濯しても色落ちしない、美しい染めの実現に至るにはとても苦労しました。
−オリジナルの柄や、ユニークな柄などはありますか
着物に使われる古典的な文様を基本としていますが。ネコやウサギの柄、T-REX、パンダのスカルなど、文様のバリエーションは多彩です。また、ジーンズを制作する端切れから作り始めた「でにぐま」というマスコットがいるのですが、今では大変人気が出て「でにぐま」だけの購入にお見えになるお客様も多いです。古典の概念に囚われず、文様やマスコットなど、日常的に京都の伝統の技に触れ、使用して頂けるのは本当に嬉しいことですね。
−お店で大切にしていることはなんでしょうか?
お客様とお話をしっかりすることを大切にしています。みなさん、衣類のお好みや着用のシーンも様々です。好みやシーンを想定して、実際にコーディネートして頂けるアイテムを一緒にお選びできるよう、コミュニケーションを心がけています。また、カスタムでの色や柄の染めにもお応えしておりますので、自分だけのカスタムジーンズの製作が可能です。
−カスタムジーンズをやろうと思われたのは何故ですか?
カスタムジーンズは、実はお客様からのお問い合せが始まりでした。「着物の様に手仕事で自分だけのジーンズを作ってくれないか?」というご要望にお応えしたところとても喜んで頂いたので、その後職人さん達とも相談し、オリジナルのサービスとして提供するようになりました。今では、弊社のオリジナリティとして認知され、オーダーを目的に世界中からご来店頂いています。
−過去のオーダーで印象に残っているデザインはありますか?
2,3ヶ月かけて左右の脚前面に、桜を多重に染め上げたデザインがとても印象的でした。まるで絵画のようで、存在感のあるとても素晴らしい作品になりました。オリジナルの図案のオーダーはもちろん、当店でも柄見本を約50種類、お色は12色ご用意しています。是非、自分だけのオリジナルデニムを作って頂きたいですね。
−来店する方に、お店ではどんな体験をしてもらいたいですか?
ご来店くださるお客様は京都に観光で訪れる方も多いので、当店のジーンズとの出会いを京都ならではの体験のひとつとして頂けたら嬉しいですね。職人の作るジーンズの魅力を直接知って頂き、購入後も自分のファッションの一部として楽しんでほしいです。そのためにも、現代の“着物ジーンズ”として、着ている方が周りから「素敵ですね!」と言って頂けるような、オススメコーディネートを心がけていきたいと思っています。