自らの故郷である滋賀の郷土料理や近江牛のホルモンをメインに、関西や滋賀の食の文化の魅力を伝えたいとの思いで始まった「近江やWabisuke」。小さな店だからこそ、人とのつながりを大切に“また戻ってきたい”と思ってもらえるような温かい店作りを目指していると語る同店オーナーの若山 卓也さんにインタビューした。
−お店のコンセプトを教えてください
渋谷の中心地とは思えないような落ち着いた空間で、滋賀県の郷土料理が味わえる居酒屋です。滋賀から直送のA4近江牛を使用したホルモンをはじめ、滋賀・関西のお料理をお楽しみいただけます。ダシを効かせた味付け、もつをホルモンと呼ぶことや、串カツ2度付け禁止など、関西の食や文化も感じられる場所を目指しています。
−どのようなことがきっかけで、この店を始めようと思われたのですか
滋賀は、豊かな自然と歴史的名称が数多く存在し、いわゆる関西のイメージよりも穏やかな人が多いことも魅力ではないかと思います。自分が滋賀から上京したとき、改めて“人の温かさ”や“地元の良さ”を感じ「都会にいても、人が集まる温かさを感じられる場所を作りたい」と思うようになりました。そこで、地元滋賀・関西の魅力も感じられ、人の温かみも感じられる場所ということで、現在のお店を始めました。
−店内の雰囲気はどのような感じなのでしょうか
立地は渋谷センター街の一角の賑やかな場所ですが、店内は、家飲みを思わせるようなちゃぶ台の完全個室やお座敷席のある落ち着いた空間です。白壁と焦げ茶の木のコントラスト、格子をあしらった扉、和紙のすかしの入った看板、提灯などのほか、滋賀県の催し(長浜曳山祭、盆梅展)や、滋賀を舞台にた大河ドラマ(軍師勘兵衛)などのポスターも飾ってあります。“ひこにゃんグッズ”や滋賀のパンフレットなども置いてあります。
−来店したお客様に、お店でどんな体験をしてもらいたいと考えていますか
知り合いのお店に来たようなアットホームな空間で、滋賀・関西のお料理やお酒はもちろん、サイズの小さなお店ならではのスタッフとの距離の近さや、家飲み感満載のお座敷・個室など楽しんでいただきたいです。味も人も含めてリラックスしてもらい、お客様にとって"また帰ってこれる場所"になればいいなと思っております。
−お店で提供されている「滋賀県の郷土料理」のメニューには、どのようなものがあるのでしょうか
“鮒寿司”“赤こんにゃく”“鯖そうめん”“鴨すき”が主です。“鮒寿司”は、鮒を米と麹でつけ込んだ発酵食品で、チーズでいうブルーチーズのように好き嫌いが分かれますが、食通にはたまらないお酒にぴったりのお料理です。“赤こんにゃく”は名前のとおり真っ赤なこんにゃくで、田楽やさしみこんにゃくとして提供しています。“鯖そうめん”はそうめんと焼鯖を合わせたお料理で、甘辛いタレと、脂ののった焼鯖をそうめんと絡めて食べるお料理です。”鴨すき”は簡単に言うと鴨を使ったすき焼きです。
−「近江牛のホルモン」を使ったお勧めのメニューにはどんなものがありますか
“日本三大和牛”の近江牛ホルモンは、上質でとろけるような脂が特徴です。当店では、秘伝のタレを絡めた“近江牛ホルモンの鉄板焼き”が一番人気があります。仕込みの段階で臭みを取る処理をしているので、ホルモン特有の臭みもありません。これまでホルモンが苦手だった方でも「これなら食べられる」というご意見を多数いただいています。また“創作もつ鍋 Wabisuke鍋”もお勧めです。溢れんばかりの野菜と近江牛ホルモンを、関西風のダシで“もつ鍋”にして提供いたします。ダシの風味にホルモンのダシが相まって、独特の旨みを感じられる鍋です。
−何かを工夫したことで、お客様に喜ばれたことなどがあれば教えて下さい
店長はもちろんですが、バイトスタッフにもお客様のお名前を出来るだけ覚えてもらうようにしています。ご来店の際や接客の際にお名前で声をかけることで、コミュニケーションが生まれ、より距離が近くなっています。2度目にご来店いただいたお客様に「こないだはどうもありがとうございました!」などと声をかけると、皆さんとても喜ばれます。また、近江牛ホルモンだけでなく、鮒寿司など滋賀の郷土料理を増やしたところ、お料理指定でご予約いただく方が多くなりました。
−お客様は関西出身の方が多いのでしょうか?
やはり多いです。東京在住の滋賀の方や関西の方が、知人を連れていらっしゃることも良くあります。特に滋賀の方は愛郷心が強いのか、お連れの方に滋賀の話を皆様熱心にしてくださいます。滋賀や関西の方だけでなく、関東出身のお客様にも、近江牛のホルモンや珍味鮒寿司など、知っていてもなかなか食べにいけないお料理をまずは楽しんで欲しいと思います。アットホームな雰囲気ですので、友達のお店に行くような感覚でお越しいただければと思います。
−お店の運営で大切にしていることはどんな点でしょうか?
小さなお店ならではのアットホーム感を大切にしています。人の温かみを感じることの出来る空間やコミュニケーションなど、気を張らずに戻ってこれるような雰囲気の店作りを心掛けています。スタッフにも、「お客様との距離の近さや、人としての触れ合いをしっかり楽しんで欲しい」と伝えています。インテリアについては滋賀の古民家のイメージを取り入れつつ、郷土のポスターや小物等でも、ご当地感を感じてもらえればと思っています。