<連載>公園散策20年の公園マイスター直伝!東京公園ガイド-Vol.5-

【東京】日本の原風景!農村風景が広がる足立区都市農業公園

2015/09/29 10:00

「自然と遊ぶ、自然に学ぶ、自然と共に生きる」をテーマにした農業公園。園内には水田、畑、温室、ハーブ園などがあり、農業体験教室、ハーブ講座等が定期的に開かれています。春はさまざまな種類の桜を観賞できることで有名。東武スカイツリーライン「西新井」駅からバスでおよそ30分のところにあります。

江戸時代にタイムスリップ!かやぶき屋根の古民家

埼玉県川口市と北区との境目に近い場所に位置し、首都高、荒川、新芝川に囲まれた三角形の公園。ハーブ園や熱帯温室などの施設がありますが、一番の見どころは田畑の中に建つ古民家の風景。他の公園にはない、「農」を感じるスポットです。

田んぼの間をまっすぐに古民家へと伸びる道。なにかホッとする、懐かしい風景です。色づき始めた稲穂を鳥から守るため、田んぼの上には網が張られています。
春から秋に田んぼの中をのぞくと、バッタやおたまじゃくし、アメンボなど身近な生き物がたくさんいます。

足立区内にあった和井田家邸の母屋。貴重な江戸時代の農家建築として区に寄贈され、足立区指定固定有形民俗文化財となっています。
時代劇のセットの中に迷い込んだような、まるでここだけ時が止まったような、不思議な気持ちになります。奥の雨戸が開け放たれ、涼しげにサワサワ揺れる竹が見えました。

中には、江戸時代のままの形で遺された釜戸や囲炉裏。

古民家の隣には、明治時代に建造された立派な長屋門。両側部分は部屋になっていて、5~6歳の子を対象にした寺子屋 「風と緑のとしのう塾」が行われています。季節の言葉に触れる「ことばの学習」や園内に咲く草花のスケッチなど、自然とふれあう学びが特長です。


 

自然とふれあい、のどかな風景に癒される

なだらかな斜面に広がる畑。ニンジン、ナス、サツマイモ、ピーマン、ネギ・・・と作物の種類は豊富です。

蜜が甘いのでしょうか。いろいろな種類の花が咲く中、特に多くの昆虫を集めているのはニラの花でした。

一緒に草むしりや水やりなどをして和気あいあいの雰囲気なグループは、農作業や花壇の手入れなどをするボランティアの方々。笑顔が絶えません。楽しそう!

耕されて黒々とした湿った土を見せる畑。湿った土の匂いが漂います。

種をまくスタッフの方の姿もありました。暑いのに精が出ること! 頭が下がります。

園内はあちこち藤棚とベンチがあって、気軽に休めるようになっています。ただ、藤棚は日よけになっても強い雨は防げないので、ベンチは風雨で汚れていることも。服を汚したくない人は敷きものを持って行くといいですよ。

ダイヤモンド富士が見える、自転車愛好家の憩いの場

古民家の正面玄関を出て右手に進むと「荒川門」です。出たところにある像の作品名は「お兄ちゃんと一緒」。魚を釣り上げた兄妹の像です。

兄妹の前に広がっているのは、荒川河川敷。チューリップの花壇があって、春になると道行く人の目を楽しませてくれます。

「荒川門」のすぐ横には「みはらし門」があります。ここは富士山頂に太陽がかかる「ダイヤモンド富士」の観賞スポットとして有名で、気象条件が整えば例年1月19~20日と11月22~23日の2度、日没に見ることができます。
「みはらし門」を入ったところにあるのが「みはらし茶屋」。1階は喫茶・軽食コーナーで、2階は足立区の地産地消を推進するレストランです。

河川敷沿いの道は人気のサイクリングコース。「みはらし茶屋」は、自転車愛好家たちの休憩スポットでもあります。スタンドが付いていないロードバイクが多いため、自転車を立てて固定できるラックが設置されています。

2階にあるレストランで、「野菜ごろごろ牛すじカレー」を注文。小鉢、サラダ、飲み物が付いて900円。園内で収穫された無農薬野菜など、季節の野菜がたっぷり! 水・木曜日定休です。

敷地内でとれる新鮮なハーブをたっぷり使ったカモミールティーは、香りがしっかりしていて絶品! おすすめです。

桜の木に囲まれた芝生の広場。桜の種類が豊富なのが特徴で、白や黄色、緑などさまざまな色が楽しめます。

広場の一角には「みのり」というタイトルの像があり、子どもたちが協力し合って高い枝から柿の実をもぐ様子がかたどられています。農業公園らしい像ですね。

子どもは心を躍らせ、大人は心やすらぐ。

ほどよい広さの敷地に、昔の農具を見学できる施設や、さまざまな手作り体験ができる工房など、楽しく過ごせる場所がぎっしり。一日飽きずに遊べます。ハーブ園や温室も、じっくり観察しているとあっという間に時間が経ってしまいます。
心やすらぐ風景の中で鳥のさえずりや虫の音に耳を傾けていると、自然と心がほぐれ、あわただしい毎日で疲れた心が癒されます。家族連れや自転車好きの方はもちろん、ちょっぴり都会に疲れて「のどかな田舎で癒されたいなあ」なんていう人にもおすすめの公園です。

この記事のプレース
足立区都市農業公園
東京都足立区鹿浜鹿浜2-44-1
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この記事を書いたライター
フリーライター。1976年生まれ。広告制作会社、新聞社等の勤務を経て独立。飲食店取材や街頭インタビューで都内を駆けまわる一方、休日は愛用の一眼レフを手に山や植物公園に出没。公園巡りを始めて20年余。季節ごとの魅力や楽しみ方を知り尽くした「公園マスター」。東京都内の公園はすべて網羅し、公園ごとのオリジナル料理や飲み物、巨木は必ずチェックしている。旅と自然を愛し、ヨーロッパ諸国の他、アラスカやボルネオへの渡航経験がある。主な執筆ジャンルは食、自然、健康など。
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