京都市西京区にある絵本・児童書の専門店「えほん館」。約3,000冊の品揃えで、子どもから大人まですべての人に絵本との出会いを提供している。「絵本を通して歓びの体験を重ねるお手伝いがしたい」という店長・花田睦子さんにお話を伺った。
−こちらのお店のコンセプトについて教えてください
「えほん館」は、絵本・児童書の専門店です。絵本というツールを通して、子どもたちに歓びの体験を重ねてもらいたい、そのためのお手伝いをしたいと考えています。「豊かな心育て」をコンセプトに、絵本や読み物合わせて、約3,000冊の児童書を取り揃えています。
−お店を始めたのは、どのようなきっかけからだったのでしょうか?
OLとして働いていた頃に、1冊の絵本に出会ったことがきっかけでした。「絵本は子どもが読むだけのものではない!すごい力を持っている!!」と衝撃を受け、絵本の世界にどんどんはまっていきました。そして、1987年の春に、会社勤めをしながら無店舗で「えほん館」をスタートさせ、3年半後に実店舗が出来上がりました。その後移転し、1999年春からは西京区のこの場所で店舗を構えています。
−差支えなければ、花田さんが感銘を受けられた絵本を教えて頂けますか?
「ペツェッティーノ〜じぶんをみつけたぶんひんのはなし〜」(レオ・レオニ作 好学社)という絵本です。ペツェッティーノとは、イタリア語で「little piece」という意味で、小さなかけらが自分探しをする、というストーリーです。自分が感じたように、「おはなしの世界」がこんなにも心動してくれるものだということを伝えられるよう、人と絵本をつなぐ役割を担っていきたいなと思っています。
−店内の様子について教えてください
10坪弱の小さな店舗ですが、店内では座り読みができるように小さな低い椅子が4脚と普通の椅子を2脚置いています。椅子に座って、お母さんが子どもに絵本を読みながら、お気に入りを見つけてご購入頂けるようにしています。壁面には天井までおすすめ絵本を一面に展示し、棚は子どもに合わせた低い位置に沢山の絵本を並べて、狭いながらも出来るだけ面を見せる工夫をして、絵本の世界に浸って頂けるようにしています。
−とてもたくさんの絵本があるので、どれを読んだらいいか迷ってしまいそうですね
そういう時は、是非スタッフにお声がけください。当店のスタッフは皆、選書とアドバイスをできるよう、知識をつけています。是非、親子で幸せな時間を過ごせる絵本に出会ってもらいたいです。また、大人の方には抱きしめたくなるような一冊と出会う瞬間を、お手伝いさせてもらえたら最高です。
−お客様と絵本の出会いで、印象に残っていることはありますか?
友人のお子様へのプレゼントを買いに来られたというお客様に、「いいこってどんなこ?」(冨山房)という絵本をご紹介したところ、その方もその場で実際に読んでくださったんです。そうしたら「この絵本、大人にもいいですね。こんな絵本があるんですね。なぜか、涙がとまりません…」と、しばらく涙を流されていて、最後にはご自分用にもご購入されていました。お客様の心の何かが、開放された瞬間に立ち会わせて頂いたような気がしました。「絵本の力」を実感した瞬間でしたね。
−ご来店されるお客様の年齢層はどのような構成ですか?
8割がファミリーで、その内親子が7割位です。残りの2割は大人の方だけでご来店くださっていて、男性の方もそのうち4分の1くらいいらっしゃいます。絵本は、子どもにも大人にも大切なことを教えてくれます。社員教育などにも使って頂けたらいいなと思っています。
−確かに、大人が読んでも絵本から教わることは多くありそうです
そうですね。絵本は子どもだけのものではないので、どんな方も気軽に読んでもらいたいと思います。以前、小学生の頃からお店に通ってくれていた男の子が成人して、一緒にお酒を飲みに行ったことがあるんです。「僕には、えほん館をいう居場所があったから良かった」という言葉を聞いた時は、なんとも言えない感慨深さがありました。本当に嬉しかったです。
−最後に、花田さんにとって絵本とは何か、教えてください
絵本は、すごい力を持っているものだと思います。絵本を読むと、よく泣くし、笑うし、ハラハラドキドキします。周りの人たちが愛おしくてたまらなくなる、そんな心が動く瞬間にたくさん出会えます。私にとっての絵本は、人生のパートナーであり、師であり、もう一人の自分そのものです!