JR御徒町駅南口から徒歩2分。山手線高架下の商業施設「2k540」の中にある”World Coin Gallery”は、日本国内で唯一、古代ギリシャ・ローマコインを取り扱う専門店である。店内には古代から近代まで、世界各国のコイン約1000点が並び、まるでコインの美術館のようだ。コインを購入するだけでなく、ペンダントやリングなどのジュエリーに加工することも出来るという同店のディレクター、藤野 拓司さんにお話を伺った。
−お店のコンセプトを教えてください
国内で唯一の古代ギリシャ・ローマコインの専門店で、世界中のコインを取り揃えております。コインを愛し、歴史と旅が好きで、こだわりの逸品をオークションで集めました。古代~近代の金貨の在庫が多数あり、約1000点以上を販売しています。その他にも、お手持ちのコインをペンダントやリングなどのジュエリーに加工するサービスも承っています。
−お店で大切にしていることはどんな点でしょうか?
ご来店頂いたお客様に、コインの背景と価値を詳しくご説明させていただくことです。海外から取り寄せた色々な古代の資料(ローマ皇帝一覧表・小物グッズなど)を進呈することで、お客様にコインについて色々と知っていただき、様々なコインを楽しくご覧いただければと思っています。
−お客さんはどのような方が多いでしょうか
ギリシャ・ローマ神話が好きな方や、ペンダントやリングなどに加工して身に着けていたいという方です。遠方にお住まいの方も当店のホームページを御覧いただき、東京へいらした時などに立ち寄られる方も多く、中には海外から一時帰国した際に御来店いただく方もいらっしゃいます。年齢層は40~60歳代の方が多いように感じますが、上は80歳代の方から下は高校生の方まで、とても幅広い年齢層のお客様がおられます。共通しているのは、歴史や神話に興味関心を持っておられ、コインの歴史的背景やデザインなど、ご自身の好みを明確に持っていらっしゃるという点です。
−コインコレクターのお客さんが多いのでしょうか
そうですね。コレクターの方が多くを占めています。お客様それぞれに、好みの時代や国といった基準がありますので、当店としてもそれに対応するため、幅広い種類のコインを取り揃えるよう心掛けています。常連のお客様であれば、その方の好みに沿うようなコインを仕入れてお勧めすることも出来ます。
−なぜローマのコインだったのでしょうか?魅力や特徴も含めて教えてください
ローマ帝国は現在のヨーロッパ・北アフリカ・中近東にあたる広大で多様な地域を、およそ600年にもわたり統合して、現代の西洋文化・政治の基礎を作り上げました。当時の経済・貿易を支え、又コインをプロバガンダ(宣伝広告)として活用し、現代の考古学にとっても最大の貴重な資料となっています。デザイン的にも、現代でも全く違和感のない素晴らしい感性を感じます。「限られた道具しかない時代に、どのようにして製造したのか?」というロマンを感じることが出来ます。
*−お店で一番高価なコインはどのようなものですか *
現在、当店の在庫の中で1点あたりの価格が最高のものは、古代ローマ帝国で造られた金貨「¥1,296,000(税込)」です。今から1800年以上前に古代ローマで造られたこのコインは、当時の皇帝マルクス・アウレリウス帝が東方の大国パルティアと戦い、勝利したことを記念して発行された、古代の記念コインです。ローマ帝国で造られた歴史的記念コインであることもさることながら、皇帝の肖像の彫りは深く、磨耗や傷が少ない美しいコインで、今後これ以上状態の良いのものをマーケット上で探し出すのは、非常に難しいと思われます。
−それでは、一番古いコインとはどんなものでしょうか
現在のトルコに栄えたリディア王国の銀貨です。リディアは世界で初めてコインを作った国です。今から約2500年前に造られたこのコインの表面には、ライオンと雄牛が向かい合うデザインが打ち出され、裏面には銀塊を固定していた跡だけが残された大変シンプルなものです。しかし、2500年前の人々が初めて作り出したこのコインは、人類の歴史の中でも特に重要な遺産であり、ここから世界のコインの歴史が始まったと言っても過言ではありません。そういう意味では、非常に貴重な一枚であり、人類全体の記憶物です。遥か2500年前に生きた人々の手によって作られたこの品は、悠久の時の流れと当時の人間の息遣いを感じさせる逸品です。
−コインの価値とは、何で決まるものなのでしょうか
コインの価値の基礎になるのはコインに含まれている金性(金、銀、銅など)やその量と言えます。アンティークコインの場合は、製造枚数や現存数による希少性、そして何より「美しさ」でその価値が決まります。古代ギリシャ・ローマコインの場合、何枚作られたかということは今になっては分かりません。しかし2000年もの歳月が経っている以上、現存数はそれほど多くありませんし、その中で傷も磨耗も無い、素晴らしい状態のものはごく僅かです。当店でも、値段の高い安いに関わらず、綺麗なものから早く売れていく傾向にあります。
−藤野様が今までコレクションされたコインの中で、特に気に入られているものはどんなコインですか
古代コインは同じデザインはあっても1枚1枚が異なり味があるのです。従って「この1枚が特にいい」と決めるのはとても難しいですね。小生のコインはすべて気に入っていて、家族のようなものですので、販売する時は「娘を嫁に出す」心境です。「嫁ぎ先で可愛いがってもらいなさい!」という気持ちです。
−お客さんには、お店でどんな体験をしてもらいたいですか
2000年以上前の、夢とロマンを感じて頂ければ幸甚です。実際に手に取ってみて、「このコインがどのようにして何時誕生したのか」「どの様にして製作されたのか?」と考えるだけでもわくわくしてきませんか?コインとは歴史を背負った世界の遺産です。世界中の国々が国名・発行年・額面を刻んでその時々、国を代表する国章や歴史上の人物、記念日・特産品などのデザインを凝らして作り上げた物です。そんなコインの魅力を是非体感していただきたいです。