公園通りの裏に入ったところにある「deco」は、シェフが厳選した“情熱を持って育てられた食材”のほか、シェフ自らが狩猟した”ジビエ”など、大自然から頂いた食材を堪能出来るフレンチレストランである。「お越しいただいたお客様一人一人に”命あるものを頂く”という尊さを体感して欲しい」と語る料理長 室田拓人さんにお話しを伺った
−お店のコンセプトを教えてください
公園通りの裏にあり、渋谷の喧騒を感じさせない落ち着いた雰囲気のフレンチレストランです。シェフである私が自ら足を運んで探し出した“情熱を持つ生産者”の育てた肉や野菜のほか、自身の手で仕留めた“ジビエ”など、こだわりの国産食材をフランス料理で表現し、ご来店いただいたお客様に“幸せなひととき”を提供いたします。
−お客さんに喜んでもらうために、特に工夫していることはありますか
羽が付いているジビエなど、「これから召し上がっていただく食材」をお見せしてから料理しています。食べる食材を一度お客様にお見せするのは、「命をいただく」ということを考えていただきたいからです。調理する前の毛や羽の付いた食材を見ることによって、「命あるものを頂く」ということをより実感していただけると思います。
−お店で人気のメニューは何ですか
1ヶ月熟成させたキジのコンソメなどです。熟成させることによって旨味がより引き出され、サラリとしている中にも豊潤な旨味が感じられます。当店は小さいお店ですので、お客様のお好みなどをお伺いして相談しながらメニューを決めることができます。
−室田さん自ら狩猟なさるそうですが、日によって提供するメニューに変化があるのでしょうか
その日に獲れた獲物や熟成によって、また獲れた場所によって毎回メニューは変わります。主に千葉の君津や蓮沼などで狩猟し、ジビエを仕入れています。
−季節によって捕れるジビエも違うのでしょうか
もちろん違います。“青首鴨”や“雉鳩”などは渡り鳥のため時季にならないと基本的に獲れません。季節によって、また獲れる場所によっても変わってきます。千葉の君津や蓮沼で秋から冬に獲れるジビエは、鴨類、日本雉、雀、雉鳩、シギ、鹿、猪、熊、兎などです。
−自ら狩猟されるのはなぜですか
野生のジビエは食べている餌によって味が個々で全く違います。山や田んぼで育っていれば、木の実や米などを食べていて、肉質は甘みがあり優しい味わいです。海や川の近くで育っていれるのであれば、小魚や藻、虫などを食べていて、独特な香りや磯の香りがします。肉屋さんから仕入れるだけでは、それらを判断することは出来ません。また、ジビエを撃った瞬間は、体温で肉は温かい状態です。それをすぐに冷まして内臓などを取ることによって肉の状態は変わります。ジビエは撃って命を頂いた瞬間から料理が始っていると考えております。
−お店の運営で大切にしていることはどんな点でしょうか
汗水垂らして一生懸命作っていただいている生産者への感謝の気持ちを忘れないことです。「命を頂いている」ということに感謝し、お客様に美味しい料理を提供しています。
−最後に、来店したお客様に、お店でどんな体験をしてもらいたいと考えていますか
「私たちが食べている食材は、全て命あるものである」という事を実感していただきたいです。そして、我々日本人が何気なく毎日使っている「いただきます」という言葉の“本当の意味”を考えていただきたいと思っています。