バラの名所として知られる、調布市に広がる広大な植物公園。都内最大の広さを誇るばら園をはじめ、つつじ園、うめ園、はぎ園など、植物の種類ごとにエリアが分かれています。深大寺界隈が人気の散策スポットであることも手伝い、一年を通してたくさんの人が来園。園内には約4800種類、10万本の樹木が植えられています。
<神代植物公園の過ごし方Point>
・再入場のために半券は必ず取っておこう。水生植物園に行く他、昼食や深大寺参拝に出るのに便利
・楽しいバラグッズは話題作りにも。お土産に最適
・公園名物「バラソフト」を楽しもう。売店は軽食や菓子が充実。ソフトクリーム以外も美味
・鉢植えや苗が買える植物売店には山野草まで掘り出し物に出合える可能性あり
・春も秋も必見!都内最大の広さを誇るばら園
JR・京王井の頭線「吉祥寺」駅からバスに揺られること20分。500円の入園券を買って中に入ります。半券は再入場に必要なので、取っておきましょう。
記者が訪れた11月中旬は菊花大会の会期中で、正門を入ったところには立派な菊が飾られていました。来た早々にテンションUP! 植物公園だけあって、常に旬の花がアピールされています。園内マップも季節ごとに変わり、旬の花が紹介されています。
順路は決まっていませんが、右手に進み、ぼたん園、しゃくやく園を経由してばら園へと反時計回りに回っていくのがオーソドックスです。
イベント用に建てられた囲いの中には、密集した花が低く垂れ下がった盆栽仕立ての菊もありました。説明書きによると、「懸崖菊(けんがいぎく)」というそう。なかなかお目にかかれるものではありませんよね。みなさん「すごい」と感心しきり。釘づけです。
江戸時代には、熱中して親の死に目に会えなくなるものとして「博打、碁打ち、菊作り」と評されたといいますが、納得です。神代植物公園ではこういった花関連のイベントもよく行われていて、魅力の一つとなっています。
ばら園に向かう途中にあるのがぼたん園としゃくやく園。秋は菊の仲間、ダリアが植えられています。菊同様に園芸種が多いダリアは、あでやかで気品にあふれた花。色とりどりの花の間を歩く人々は、誰もが笑顔です。
花壇の広さは、さっさと歩けば2~3分で見てまわれる程度なのですが、同じものが一つとしてなく、どれもそれぞれに見事な美しさなので、時間を忘れて何度も見てまわってしまいます。
八重咲き、グラデーション、花びらが袋状になったものなど、種類はさまざま。ボタンやシャクヤクもそうですが、長い時をかけて人の手によって生み出されて来た園芸品種には、野の花とは違った美しさ、惹きつけられずにはいられない、魔的な美があります。
神代植物公園の代名詞ともいえるばら園には、長方形の大きな噴水を囲むように多彩な品種が整然と配置されています。奥の一段高い場所には洋風東屋とでもいうべき休憩所があり、ばら園全体が見渡せます。ところどころに彫像が置かれていたりして、洋風の庭園美が楽しめます。
花期は年2回、春バラは約400品種、5200本ほど、秋バラは約300品種、5000本ほどが植えられています。見頃はそれぞれ5~6月と10~11月。春のイメージが強いのか、例年秋の方が空いています。
それぞれに、花の名前や作られた国や年代が書かれた札があります。品種名が分かっていれば、お店で買うときに助かりますよね。また、バラは香りも楽しめる花。アロマ効果でストレス解消にも良さそうです。
ばら園にある売店「ローズガーデン」は、公園名物のバラのソフトクリーム(260円)の他、たこ焼きやお団子などの軽食も。甘酒も売られていました。
売店を過ぎてさらに奥へ進むと、深大寺の裏山に当たる雑木林。木立の中を道なりに歩いていくと「深大寺門」にたどり着きます。そば屋や土産物店に行くならならここから出るのが便利。半券を見せれば再入園できます。15分ほど歩けば、神代植物公園の一部である水生植物園にも行けます。
また、こちら側にもバス停があります。行き帰りにバスを利用するなら、チェックしておくといいですよ。
クヌギやコナラが茂る雑木林。秋には枯れ葉に混じってたくさんのどんぐりが落ちています。深大寺門の近くでは、尾の長い野鳥オナガの姿がよく見られます。
後半はウメやツバキなどの花木が集まったエリアから。正門から遠いため、梅の季節でもない限り来る人の少ない穴場的スポットです。まずはさるすべり園。花も葉も落ちた裸の木ですが、ここに来た人は必ず見事な枝ぶりに足を止めます。もちろん8~9月の花の季節は、さらに見ごたえがあります。
さるすべり園の向かいにあるのがつばき・さざんか園。種類によって開花時期にかなり差があり、花が終わりかけている木もありましたが、大分部はこれからの様子。秋から春まで長く楽しめる場所ですね。
見てまわるための道などはなく、適当に木の間を通って眺めます。木はかなり密集して生えているのですが、一部ぽっかり開けた空間があるのがおもしろいところ。不意に視界が開けてテーブルとベンチが現れると、毎回ちょっとだけ驚いてしまいます。
ツバキやサザンカは、落ちたところも絵になります。
色づき始めたかえで園の横を通り、芝生広場を目指します。敷地が広いので道幅は広く、ゆったり歩けるのが魅力です。
ふわふわの穂をつけたパンパスグラスが存在感を放つ芝生広場は、きれいに整備されています。ピクニックに最適。野球やサッカーなどの球戯は禁じられていますが、バドミントンなどはOK。広場の売店で、ミニバドミントンセットやシャボン玉を販売しています。
木肌が美しい赤松や枝ぶりが格好いい黒松など、一年中見事な松を鑑賞できるのが池の周辺。点在するベンチに腰を下ろして、ゆっくり和の風情を楽しめます。池の端には、スイレンの仲間のオニバスが見られます。説明書きによると、南米に自生するパラグアイオニバスという種類で、葉は直径最大1.5メートルにもなるとのこと。間近で見ると、その不思議な形や、作り物のように精巧な細部の美しさに感動してしまいます。
池を過ぎれば、もう正門近くです。この辺りは、帰る前に休憩したり、お土産を買ったりするのにぴったりの場所。苗や鉢植えを売っている園芸店ではちょっと珍しい山野草なども扱っていて、眺めるだけでも楽しいですよ。
園芸店の横にあるレンガ造りの建物は、売店「ガーデンビューロー」とレストラン「グリーン ガーデン」。ケヤキの木の下にはいくつもテーブルが置かれ、お店で買った軽食を食べるのに好都合です。
売店には、バラのジャム、バラのキャンディ、バラの紅茶、バラのようかん・・・と、これでもかというほどのバラグッズが。バスソルトなども置いてあります。気軽にあげられそうな手頃な物ばかりで、話のタネにもなるので、どれも人気のようです。
よく整備されていて、いつ訪れても何かしら見どころのある植物公園です。現在リニューアル工事中(※)ですが、大温室も見どころの一つ。ベゴニアを中心に、カラフルな南国の植物を観察できます。来春の完成が待ち遠しい! 春夏はもちろん、秋はバラ、菊、ダリアに紅葉、冬はサザンカ、冬桜、雪のかかったボタンなど、魅力は尽きません。基本的に花は朝が美しく、また16時には閉園してしまうので、早めの時間に来るのが吉。
神代植物公園通りを挟んだ北側には無料のエリアもあり、東京の絶滅危惧植物について学べる施設や、見晴らしのいい丘などで楽しめます。
(※ 大温室のリニューアル工事は平成28年春まで)