6月、鎌倉のお寺はあじさいの季節。境内があじさいの花で彩られます。北鎌倉周辺は、歴史のある古刹が街道沿いに並んでいて、あじさいの寺めぐりが楽しめます。例年の花の見頃は6月上旬〜中旬。梅雨の晴れ間をねらって、満開のあじさいを求めて北鎌倉に向かいました。
スタートはJR横須賀線北鎌倉駅。ハイシーズンには、電車が止まるたびに多くの人が乗り降りします。
弘安5年(1282年)鎌倉時代に創建された古刹です。石段を登って総門をくぐり、境内へ。
天明5年(1785年)に建てられた山門や、国宝の洪鐘(おおがね)、本尊をおまつりする仏殿など、風格ある建物が広い境内のあちこちにあります。
あじさいは参道に点在しています。風景の一部として楚々と咲くあじさいの姿が印象的です。
踏切を渡って鎌倉街道に出て、鎌倉方面に歩いていくとほどなく、東慶寺へ。
弘安8年(1285)、鎌倉幕府の執権・北条時宗の夫人、覚山志道尼が開いた寺です。当時は、女性の側からの離縁が許されておらず、女性が救済を求めて駆け込む「駆込み寺」として知られていました。現在は、臨済宗の男僧寺です。
東慶寺の境内は、四季を通じてさまざまな花で彩られます。早春は福寿草や梅、4月は桜、晩秋には紅葉も見どころです。しかしなんといっても見どころは6月。山門に向かう階段の両脇であじさいが出迎えてくれます。
山門をくぐり境内に入れば、さまざまな種類のあじさいが咲き乱れています。緑が色濃い境内で、青紫色や白、紅色の花がよく目立ちます。
この時期はあじさい以外にも多くの花が見られます。白や紫の花姿が美しいハナショウブ。
東慶寺から鎌倉街道をさらに鎌倉方面に進むこと数分。踏切の手前に浄智寺の入口があります。鎌倉五山の第四位という格式ある古刹なのです。入ってすぐにある小さな池は「甘露の井」。かつては不老不死の水と言われた名水が湧いていました。
多くの人で賑わう街道沿いから境内に入ると、静けさに包まれます。緑あふれる境内は、北鎌倉のオアシスのよう。ベンチで人々が思い思いにくつろいでいます。階段脇や境内、ところどころにあじさいの花が咲いていますが、非常に控えめな感じです。
境内で一息ついて、ふたたび石段を下ると…、目の下にアジサイやツツジが点々と広がっていました。登って来たときには気づかなかった景色。ちょっと嬉しくなりました。
浄智寺の先、踏切を渡ったら、いったん北鎌倉方面に戻り、細い路地(明月院通り)に入ります。道の途中にもアジサイの群落ポイントがあり、多くの人が写真を撮っていました。
鎌倉のあじさいの名所、あじさい寺と言えば、真っ先に名前が挙がるのが明月院。臨済宗建長寺派の寺院です。境内には大きなやぐら(中世のお墓)や、見事な枯山水庭園などの見どころがあります。
明月院のアジサイは約2500株、日本古来の青色のアジサイが多いようです。晴れた日もきれいですが、雨の中、あるいは雨上がりのみずみずしい花も風情があります。
今回のあじさい寺めぐりでは、色も形もさまざまなあじさいの花に出会いました。まりのような花姿のホンアジサイ。
大きな花が外側にスプレー状に咲くガクアジサイ。
いずれもお寺で丹精込めて育てられた花たちです。毎年すてきな花に出会えることに感謝。
明月院から北鎌倉駅に戻る途中、すてきなお庭のある甘味処に立ち寄りました。店先の看板には「手作りの甘味」の文字。
あんみつやぜんざいなど、心ひかれる和の甘味が数々揃うなか、お店の一番人気はみたらしだんご。国産の上新粉を練り上げたお団子は上品な小粒です。口にするともっちりとした食感のお団子と、上品な甘味のみたらしあんが絶妙。みたらしあんは羅臼昆布と喜界島の黒糖を使っているそうで、すっきりした後味です。
しっとりとした自然の美しさが感じられる北鎌倉。あじさいの時期を過ぎると、静けさ漂う古都の風情が戻ってきます。建物や庭園に親しむ寺めぐりを楽しめるのは、観光客の賑わいが一段落したこれからなのかもしれません。お寺によっては、座禅会や写経体験、お坊様のお話をうかがう説教会なども定期的に行われています。
木々の緑が色濃くなる夏、秋の七草が風情を添える秋、そして紅葉の時期…。季節ごとにさまざまな姿を見せてくれるであろう北鎌倉の町、じっくりと、何度も訪れてみたくなりました。