【京都】伝統を守り、後世に伝える職人技「本ろうけつ染め」によるのれん染め工房

2015/11/04 14:35

「のれんの京都・染元しょうび苑 (有)勝美商店」は、京都でも希少価値のある“本ろうけつ染め”を用いたのれん染め工房だ。昔ながらの伝統工芸が消えゆくなか、新しい試みを取り入れ、お客様に喜ばれるのれん作りを守り続けている。「“本ろうけつ染め”のよさを知り、お客様に喜んでもらいたい」という店長兼染め職人・上林博之さんにお話を伺った。

「のれんの京都・染元しょうび苑 (有)勝美商店」は、京都でも希少価値のある“本ろうけつ染め”を用いたのれん染め工房だ。昔ながらの伝統工芸が消えゆくなか、新しい試みを取り入れ、お客様に喜ばれるのれん作りを守り続けている。「“本ろうけつ染め”のよさを知ってもらい、お客様に喜んでもらいたい」という店長兼染め職人・上林博之さんにお話を伺った。

店長兼染め職人の上林博之さん

伝統の技を守りたい…京都でも希少価値の「本ろうけつ染め」工房

−こちらのお店で手がけられているものを教えてください。

当店は創業50年、京都でも希少価値のある「本ろうけつ染め」のれんの染め工房です。のれんの事なら京都・染元「しょうび苑」と呼ばれるようになることを目指し、お客様に喜ばれるのれん作りを目指しています。そして、伝統の「本ろうけつ染め」を後世に伝えていきたいと考えています。

京都 上桂にある工房

工房の中には多くののれんが

−「本ろうけつ染め」とは、どのような染め方なのですか?

「本ろうけつ染め」は、布に蝋を染み込ませ、染め上げます。染め上がりには、蝋のひび割れ模様ができ、味わい深い不規則な模様ができます。もし、ひび割れのない「本ろうけつ染め」を作って、と言われるとお断りしなければなりません。

布に絵柄を下書きする

下書きにそって蝋を染みこませる

水洗いで蝋にひびを入れる

色入れ

再度蝋を付ける

最後は湯洗いで蝋を落として柄が完成

独特のひび割れが味わい深いだ

−お店を始めようと思われたきっかけはどのようなことだったのですか?
「のれんを買いたいけれど、買える場所がない」という方が多い、と以前から感じていたことがきっかけでした。馴染みの卸問屋が倒産してしまったことも背景にあり、本ろうけつ染め、そしてのれんの販路を拡大するためにHPでの販売に踏み切りました。最初はなかなか売上に繋がりませんでしたが、WEB担当者を迎えるなど新しい試みを試行錯誤やってきて、少しずつお問合せが増え、今では世界からご注文を頂けるようになりました。「本ろうけつ染めのれん」を広めるため、古い慣習に囚われることなく、新しい試みを積極的に取り入れていこうと思っています。昔ながらの伝統工芸品が次々と消えていくような世の中ですが、一丸となって伝統の本ろうけつ染めを守っていきたいと思っています。

世界に1枚の仕上がり、素材や季節によっても変化する職人技

−「本ろうけつ染め」について詳しく伺いたいのですが、本ろうけつ染めでしか出せない仕上がりはどのようなイメージなのでしょうか?

蝋を使うことで、同じように染めてもひび割れ方の違いで一枚一枚異なり、世界に1枚の物が出来上がります。また、本ろうけつ染めで出る模様のラインは、カッターで引いたような直線的なラインではなく、自然なやわからいラインに仕上がります。そのため、どこか懐かしい、暖かみのある商品になります。

引き染めの作業に力が入る

インテリアとしても使いたい

−どのような模様になるのかは、染めて初めてわかるのでしょうか?

私も約23年職人をしておりますので、だいたいわかってきます。白い部分に指先の感覚でひび割れ模様を入れていくのですが、力を入れすぎるとひびが入りすぎてしまうので、加減をしながら作業を行います。染める色によっても、びび割れの強弱を付けます。薄い色の場合はひび割れを多くして、濃い色の場合は少し弱く割ります。その日の気温によっても、ひびの割れ方が異なるので夏は強く、冬は弱くしております。今でも、さらに良い物を作りたいと日々試行錯誤です。自分の性格上、完璧だと思うと満足をして怠けてしまいますので(笑)ほぼ出来ていても、もっと上を目指しております。

文字や柄によって雰囲気が変わる

−素材によっても仕上がりや難しさは変わるのでしょうか

そうですね。厚みや生地の打ち込み具合でも変わってきます。綿生地は、麻生地より生地目が詰まっていて厚みもあります。文字を白く出すためには、蝋かさを出していきます。蝋かさを出すというのは、コップになみなみと水を入れこぼれる直前の状態に蝋を付けるようなイメージです。蝋かさがないと文字が白く出なくなってしまうんですね。表に蝋を付けて、裏にも付けてから、もう一度表に蝋を付けています。その時、はみ出ないように蝋を付ける作業は職人の技にかかっています。まさに、本ろうけつ染めの命と言えます。

−職人の方は何人ぐらいいらっしゃるのでしょうか

当工房では、社長(父親)・兄・弟(私)となります。3人とも、下書き・蝋付け・染め・裁断・仕立てとすべての作業をできますが、分業して担当別としております。以前は、広幅(着物の生地以外の)の綿生地の本ろうけつ染工房が京都に約5社ありましたが、今では当社のみとなってしまいました。後継者不足と需要減少が続いておりますが、これまでの伝統の染め技法を守り続けて行くという使命感と、後世に引き継いでいきたいと思いのもと家族みんなで取り組んでいます。

お客様に喜んで頂くものづくり、のれんを通して生まれる交流

−ご注文をされたお客様とのエピソードがあれば、教えて頂けますか?

楽屋のれんのご注文されたお客様で、のれんと風呂敷とを同じデザインで一緒に作りたいとご希望された方がいらっしゃいました。Twitterでご贔屓のファンを募集されて、皆さんで協力してお作りになられるとのことでした。また、中心に“雅”と大きく入れて、周りに小さい“雅”の文字を41個入れるというデザインを希望なさるお客さんもいらっしゃいましたよ。後からお聞きしたところ、それは集まったファンの方41名が個々に書いた“雅”の文字だったそうです。お話を聞いて、私もすごく感動しました。お作りした風呂敷もすごく喜んで頂けましたし、出来上がったのれんの写真をポストカードにされるなど、どちらも大変喜んで頂けました。

−海外からもご注文が来るということですが、どのような方からご依頼が来るのでしょうか?

海外からご来店くださる方もいらっしゃいますし、海外発送も行っております。以前、海外在住の外国人のご夫婦のために日本の方が、窓一面のカーテンの代わりになるのれんを麻生地でご注文されました。柄をつないで作りまして、製作した中では一番大きいものでした。後から飾った写真を頂いて、感動しました。また、フランス在住の日本人の方が「飯田屋」さんというお店を出される際にのれんを作らせていただきました。お父様が直接ご来店されてやり取りをさせて頂いたのですが、フランスで市長も来られるほど有名なお店ということで驚きました。

のれんはお店の顔。お店ののれんの注文も

−最後に、「本ろうけつ染め」の魅力とお店として大切にされていることをお聞かせください

蝋は“生き物”です。自分の気持ちが乱れていると、出来上がる物もそれなりな物に仕上がってしまいます。いつも心を落ち着けて、蝋・刷毛・生地の気持ちになって、温度・湿気・気温を感じながら、作業に接しています。いつもありがとうと、感謝の気持ちで日々努力しております。是非、本ろうけつ染め体験をして頂いて、「本ろうけつ染め」を知ってもらいたいです。お客様に喜んで頂くこと、のれんを通してお客様と友人のようなお付き合いが出来ると嬉しいなと思っています。


京の宿 しみずさんの暖簾も担当

お肉屋さんののれん

ちょっとユニークなデザインののれん

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この記事のプレース
のれんの京都・染元しょうび苑
京都府京都市西京区山田久田町10-15
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